セックスってとても気持ちいいですよね。もちろん、単純に性的に気持ちいいというのもありますが、それ以上の快感もあります。例えば、幸せになるような感じや、ストレスが解消されるような爽快感などです。しかし、セックスのメリットはそれだけにとどまりません。実はセックスには「健康」の良い影響を与えてくれるのです。いったいどんな素晴らしい効果があるのか、とても気になりますよね。「若返り」「ダイエット」「睡眠サポート」「メンタルの安定」「免疫力の向上」など、ざっと挙げるだけでもこれだけのメリットが出てきます。

エッチが女の子の美容やダイエットに良いという話は、以前にも聞いたことがあるかもしれませんね。感覚的にも何となくイメージしやすいのではないでしょうか。しかし、睡眠やメンタルの安定化、さらに免疫力の向上というのは、どういうことなのか分かりづらいかもしれません。重要なポイントは、セックスにはそれほど素晴らしいメリットがあるということ。セックスで得られるメリットについて詳しくすると、彼とエッチするのがもっともっと楽しくなりますよ。そこで本記事では、セックスによる10のメリットについて、科学的なデータも交えて徹底解説します。

セックスが健康に良い理由

セックスは健康に良いです。逆に、セックスをしないと女の子は健康になれない、と言っても過言ではありません。私たちの身体の健康は、性的な健康と結びついています。女性には性の周期があり、それによって体調が左右されることからも、イメージがつきやすいのではないでしょうか。さらに、精神もその影響を強く受けます。日常生活で不安やストレスを感じることが多い場合でも、セックスをすることでそういったことを解消して、心身ともに健康的な日常を送ることができるのです。セックスで得られるメリットには、主に次のようなものがあります。

  • 免疫力が向上する
  • ストレス解消になる
  • ほどよい運動になる
  • 自律神経の働きが整う
  • 尿失禁の改善も期待できる
  • 若返り効果で美しくなれる
  • 月経前症候群を改善できる
  • 脳の老化を防止できる
  • 良質な睡眠につながる
  • メンタルが安定する

何となくイメージがつきやすいものや、なぜそうなるのか分からないものも、いくつかあるのではないでしょうか。特に、免疫力の向上や脳の老化防止、メンタルの安定化などは意外かもしれませんね。こういったメリットは、女性が快感を得ることや「オーガズム」に達することによって、その効果もより強くなります。つまり、女性がセックスをすると気持ちよくなれるだけではなく、心身の状態も改選することができるという、まさに一石二鳥になるということです。セックスで得られる上記10の素晴らしいメリットについて、ひとつずつ詳しく見ていきましょう。

1.免疫力が上がる

女性がセックスをすると免疫力が向上します。このメリットは今回ご紹介するなかでも、最も意外もしくは嘘っぽく感じられるかもしれませんね。しかし、これにはしっかりとした科学的根拠があるのです。ある研究では、112名の大学生を対象として、性行為の頻度と免疫力との関連性を調査しました。具体的には、大学生をそれぞれのセックス頻度によって、「なし」「まれ(週1回未満)」「頻繁(週1回~2回)」「非常に頻繁(週3回以上)」の4つのグループに分類して、それぞれの唾液サンプルを解析したのです。一方で、セックスの性的満足度とカップルの関係の長さに関するデータは、他のグループとの間に有意な差は見られませんでした。

その結果、「頻繁(週1回~2回)」に分類されたカップルは、他のグループよりも「免疫グロブリンA(IgA)」のレベルが有意高いことが明らかになりました。免疫グロブリンとは、血液や体液中に存在していて、「抗体」としての機能を果たすタンパク質の総称です。抗体とはいわば免疫力のかなめのような存在で、体内に病原体などが侵入してきたときに対抗してくれます。この免疫グロブリンには5種類あるのですが、その中でも喉の表面や腸の内側、気管支の内壁などの粘膜に存在していて、体内に侵入してきたウイルスなどを破壊してくれるのがIgAです。IgAのこういった作用は「粘膜免疫」とも呼ばれており、免疫力に極めて重要な役割を果たしています。

つまり、セックスをすることでこういった免疫機能が高まり、身体が細菌やウイルスなどに侵されるのを防ぐやすくなるということです。実際にどれくらいの影響があるのかは未確定の領域ですが、感染症の流行しやすい季節ではありがたいことですよね。しかし、気になるのがセックスの頻度がとても高い場合は、IgAのレベルが上昇しないという結果が出ていることではないでしょうか。要するに、週に1回~2回くらいのセックス頻度が理想的で、それ以上でも以下でも免疫力向上の効果は得にくい可能性があるということです。少なくとも免疫力の向上に関しては、適度な頻度のセックスを行うことで得られると考えておけば良いでしょう。

2.ストレス解消

セックスはストレス解消に大きな効果があります。これは、経験としても実感している人が多いかもしれませんね。むしろストレスを解消してスッキリするために、オナニーをするという女性も多いようです。実際に、日本のセックストイメーカー「TENGA」は、アメリカ人の男女を対象に性に関する様々な調査を行いました。その結果、ストレスの解消法として有効な方法として「セックス」を挙げた人が最も多く、その次にオナニーが多いことが明らかに。つまり、セックスやオナニーといった性行為は、多くの人にとってストレス解消のための有効な方法だということです。

ある研究では58名の中年女性を対象として、36週間にわたって性行動やストレスの多い出来事、気分の変化などについて記録してもらいました。その結果、パートナーとの肉体的接触および性的行動が、翌日のネガティブか気分やストレスを低下させて、ポジティブな気分にすることが明らかになりました。しかし、こういった気分の変化はパートナーなしで迎える、いわゆるマスターベーションのオーガズムには該当しなかったようです。さらに、気分が前向きになる日はパートナーその性的活動も活発になる一方で、否定的な気分の場合は性行動には特に影響しませんでした。つまり、セックスはストレスを解消して、パートナーとの愛をさらに深めてくれるということです。

ただし、こういったストレスの解消には、恋愛関係の満足度が大きく影響する可能性も示唆されています。ストレスと性的活動との関連を調査した研究では、75人の成人を対象として、18日間連続してストレスと性的活動の記録を行ってもらいました。その結果、ストレスを多く感じた翌日はセックスをすることが多く、カップルの関係に満足している場合はセックス後にストレスが軽減されることが明らかになったのです。しかし、逆にカップルの関係に満足していない場合は、セックスによってストレスは緩和されないことも明らかに。つまり、カップルの関係が良好な状態でないと、セックスによるストレス解消効果は期待できないということです。

また、女性はストレスを感じているときに、性衝動が活発になることを示す研究結果も報告されています。18歳~20歳の女性を対象とした研究では、人間関係やメンタルヘルスと性的行動の関連性を調査しました。調査対象となった女性の4分の1は、中程度から重度のストレス、もしくは鬱病を抱えています。女性は週の36%で性行為を行い、性的に活発な週の割合は、ストレスの少ない女性よりも多い女性の方が、約1.6倍多いことが分かりました。鬱病の症状に関しては、性行為の頻度とは関連していないようです。この結果から、ストレスを感じることが多い女性は、そうではない女性よりもセックスの頻度が高くなりやすいことが分かります。

それでは、なぜこういった結果が出るのでしょうか。それはオーガズムに達するときに分泌される「オキシトシン」というホルモンが、大きく影響しているためだと考えられます。オキシトシンは女性の妊娠や授乳に重要なホルモンですが、温かい感情をもたらしてストレスを緩和する作用もあることが明らかになりました。そのため、現在ではオキシトシンは「幸せホルモン」とも呼ばれています。オキシトシンは愛する人と触れ合うことで分泌されますが、特にセックスでオーガズムに達するときはそのレベルが高まりやすいようです。これがセックスでストレスを解消できる理由であり、逆にストレスを抱えているときにセックスしたくなる理由だと考えられます。

3.程よい運動になる

こちらも経験で感じやすいことだと思いますが、セックスは適度な運動になります。22歳前後の若いカップル21組を対象に、エネルギー消費量を計測するアームバンドを装着して、セックスのときにどれくらいのカロリーを消費するかを計測しました。その結果、セックス全体で男性は101kCal、女性は69kCalを消費することが明らかに。これは1分あたりに換算すると男性が4.2kCal、女性は3,1kCalの消費に相当します。これは運動強度を示す「METS(メッツ指数)」に換算すると、男性が6.0METS、女性が5.6METSになるということです。

ちなみに、METSとは運動強度を示す指数のことで、この数値が高いほど激しい運動だということになります。一般的に3.0METS~6.0METSの運動は、早歩きやテニスのダブルス、少し軽めのサイクリングに相当する運動量です。6.0METSを超えると時速10km/hくらいのジョギングや速めのサイクリング、バスケットボールやサッカーなどの運動に相当します。前述したようにセックスのMETSは6.0に近いので、かなりの強度の運動になるということです。これは驚きの結果ではないでしょうか。

しかし、先ほどの研究では女性がセックスで消費するカロリーは、だいたい70kCalくらいだということでした。これは少ないように思えるかもしれませんが、重要なポイントはセックスの長さはカップルそれぞれだということ。1分あたり3.1kCalのカロリー消費ということは、セックスを1時間続ければ186kCalものエネルギーを消費できるということです。186kCalはだいたい厚めの食パン1枚、もしくはティースプーン7杯~8杯分の砂糖くらいのカロリーに相当します。他の食品にたとえると、意外と多いことが分かるはず。なぜなら、186kCalのカロリーは女性が1日に摂取する食事の、だいたい9%~10%くらいに相当するからです。

言い換えれば、セックスを積極的にすればそれだけのエネルギーを消費することができ、ダイエットを成功させやすくなるということです。もちろん、1時間もセックスすることは現実的ではありませんが、彼にちょっと頑張ってもらってセックスの頻度を上げれば、相当のカロリーを消費できます。さらに、女性が積極的に動ける騎乗位を優先的に取り入れれば、さらに効果的かもしれませんね。ダイエットで最も重要なことは、摂取カロリーを減らすことではなく、消費カロリーを増やすことです。食事量を過度に減らすダイエットは女性の健康に悪影響を及ぼすことが多いので、運動量を増やすこの方法はかなりメリットが大きいと言えるでしょう。

4.自律神経が整う

セックスをすることで、自律神経の働きを整えることもできます。自律神経とは、身体の様々な機能を整えるために欠かせない、極めて重要な神経系です。自律神経は主に内臓の働きや代謝系、体温などの機能をコントロールするために、24時間休みなく働き続けています。自律神経には2種類のものがあり、交感神経と副交感神経です。これら2つの神経はまるでシーソーのように働き、どちらかが優位に立つともう片方は落ち着きます。一般的に、交感神経が優位になると血圧が上がって心身が興奮状態になり、逆に副交感神経が優位になると血圧が下がり心身は落ち着いた状態になるのです。

しかし、何らかの原因で自律神経の働きが乱れると、内臓の働きに異常が起きて息切れや動悸などの身体的な症状が出たり、不安や焦燥感が募ったりするなどいわゆるノイローゼやヒステリーのような精神的な症状が出たりしてしまいます。これを「自律神経失調症」と呼び、実に多くの女性が悩まされている疾患なのです。実は、セックスにはこの自律神経の働きを整えて、自律神経失調症を改善したり、そのような状態になってしまうのを防いだりしてくれる働きがあると考えられています。

セックスのときは心身ともに興奮した状態になるため、主に交感神経が働くようなイメージがあるかもしれません。確かにセックスの最中はそうなのですが、性欲を感じてムラムラするのは、実は副交感神経が優位になっているときなのです。分かりやすくいうと、副交感神経が優位に立って心身がリラックスしているときに性欲を感じ、それからセックスへ移行してどんどん快感が高まるにつれて交感神経が活性化するということ。このように、セックスにおいて自律神経はかなり複雑に働いているのです。言い換えれば、セックスではそれだけ自律神経が激しく働くので、機能を正常化できるチャンスでもあるということ。

自律神経系は心臓血管病に強く関係していて、自律神経が乱れると高血圧や心血管疾患、不整脈などの原因になると考えられています。また、自律神経系の作用は男女間で違いがありますが、これは性ホルモンによる影響のようです。女性ホルモンの一種であるエストロゲンは、女性が性的興奮やオーガズムを感じると分泌量が増えると考えられています。実は、このエストロゲンには「アポトーシス」の調整作用があることが、明らかにかっているのです。「アポトーシス」とは「細胞の自殺」のことです。身体のあらゆる組織は細胞によって構成されていますが、この細胞には様々な理由でエラーが頻繁に発生します。エラーが起きた細胞は癌化する可能性があるなど、他の細胞にも悪影響を及ぼすため危険です。

そのため、細胞にはあらかじめ異常が起きたときに自ら死滅するように、プログラムが組み込まれています。これがアポトーシスなのですが、アポトーシスの働きが乱れる原因のひとつが女性ホルモンの欠乏です。エストロゲンの分泌量が経ると、骨粗鬆症や癌などのリスクが高まることが分かっています。女性ホルモンは「アンチエイジング」に効果的だといわれていますが、こういったアポトーシスの調整作用も、アンチエイジングをサポートしているのです。つまり、女性がセックスをするとホルモンが活性化して、身体を若々しく保ちやすくなる可能性があると言えるでしょう。

5.尿失禁の改善に?

これはセックスそのものの効果というわけではありませんが、セックスにおいてとても重要な動作が、尿失禁を防いでくれる可能性があることが分かっています。セックスでカップルの快感を大きく作用するのは、「膣の締まり」です。膣がペニスをぎゅっと締め付けてくれると、男性は膣からの圧力でとても気持ちよくなることができますし、女性の方もペニスによる刺激を強く受けられるようになるので、双方とも快感が高まります。こういった膣の締まりに大きく作用しているのが、「骨盤底筋」と呼ばれる筋肉群です。

骨盤底筋は骨盤周辺にある複数の筋肉の総称で、まるでコルセットのように腰まわりをぎゅっと取り囲んで、内臓などの組織を支えてくれています。しかも、膣の締め付けや排泄のコントロールなどの役割も担っている、非常に重要な筋肉なのです。ところが、様々な理由から骨盤底筋の筋力が低下すると、これらの機能も低下してしまいます。その中でも女性にとって悩ましいのが「尿失禁」でしょう。尿失禁とは自分の意図しないタイミングで尿が出てしまう疾患。その中でも「腹圧性尿失禁」には多くの女性が悩まされています。

腹圧性尿疾患とは、席やくしゃみ、運動時などで腹部に圧力が掛かったときに、尿が漏れてしまうという疾患です。腹圧性尿失禁の大きな原因は、骨盤底筋の筋力低下によって、尿道を締める働きが低下することだと考えられています。こういった厄介な骨盤底筋の筋力低下を改善、もしくは予防するための運動が「ケーゲル体操」なのです。ケーゲル体操のやり方はいたって簡単で、一定のリズムで骨盤底筋に力を入れてギュッと締めたり、また緩めたりするのを繰り返すだけ。これだけで骨盤底筋を効果的に鍛えることができるのです。

実際に、骨盤底筋を鍛えるケーゲル体操が、腹圧性尿失禁を改善する効果があると証明されています。腹圧性尿失禁を抱える50名の高齢女性を対象とした研究では、ケーゲル体操を含む骨盤底筋トレーニングを行ってもらいました。トレーニングを2か月行ってもらった後に改めて調査を行うと、尿失禁の症状および自尊心の評価が優位に改善していることが明らかになったのです。尿失禁は女性の自尊心を大きく傷つけてしまいます。ケーゲル体操を行うことにより、セックスに重要な膣の締まりが良くなることはもちろん、尿失禁という大きな問題も改善することができるのです。

6.若返り効果

近年「DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)」というホルモンが注目を集め始めています。このDHEAは別名「長寿ホルモン」とも呼ばれていて、主に副腎皮質、つまり腎臓の上部にある内分泌器官で分泌されているものです。分泌量は思春期のころに急速に高まって20代でピークを迎えて、40代までに急激に分泌量が減少して、80代になるとほとんど分泌されなくなります。DHEAは、実は体内でテストステロンやエストロゲンといった性ホルモンに変換されるので、DHEAの分泌量の減少は性ホルモンの低下を招き、老化の原因になるのではないかと考えられているのです。

DHEAの効果には様々な説があり、その大きなものが「アンチエイジング」つまり若返りの効果です。DHEAのサプリメントを摂取すると、老化のプロセスが遅くなり、認知機能や幸福度、身体の機能などが改善するのではないかと考えられています。骨密度や鬱病の症状も改善できる可能性があるという説もあるようです。また、一部の研究ではDHEAが閉経後の女性の膣の乾燥を改善して、性機能を高めることができると示唆しています。このように様々な効果があると考えられているDHEAですが、またまだ研究途上の段階にあるため詳細は分かっていません。

また、DHEAは「コルチゾール」というホルモンに大きく影響すると考えられています。怪我や事故などで損傷した組織が回復するためには、持続的な組織の損傷を抑制して修復メカニズムを活性化させることが重要です。しかし、ストレスによって分泌されるコルチゾールが、こうした働きを阻害してしまいます。コルチゾールの主な作用は、異化作用と呼ばれる筋肉を分解する働きや、免疫機能を抑制する作用など。それを抑制してくれるのがDHEAで、免疫系の暴走「炎症性サイトカイン」を抑制して、回復をサポートしてくれることが明らかになりました。その他にも、性機能の低下や骨粗鬆症などの改善に用いられるホルモン療法の副作用も、DHEAが改善することを示す研究結果も報告されています。

このDHEAはセックスによって、分泌量が増えるとする説があるようです。DHEAが増えると前述したように、若返りの効果を得られる可能性がありますが、それだけではなく性欲や性機能の向上といった嬉しい効果もあるかもしれません。まだまだ不明な点が多いDHEAではありますが、これが体内でエストロゲンなどの性ホルモンの分泌をサポートすることは確実です。エストロゲンには美肌やアンチエイジングの作用があるのですが、こういった効果はDHEAのものとよく似ていますよね。セックスをすることによってホルモンの働きが活性化されて、身体と一緒に性生活も健康なものにできるのです。

7.月経前症候群の改善

女性の大きな悩みのひとつが「月経前症候群(PMS)」ではないでしょうか。月経前症候群には、下腹部や乳房の痛み、肌荒れやむくみ、頭痛やめまいなどの身体的な症状や、情緒不安定やイライラ、抑鬱感や睡眠障害といった精神的な症状が出てしまいます。男性はなかなか分かってくれないこれらの症状、とてもつらいですよね。しかも、月経前の数日から1週間くらいも症状が続くので、どうにかしたいと思っている女性は多いはずです。ただ、月経前症候群の原因は、女性ホルモンの変動にあるということ以外は特に分かっていません。

私たちの身体は女性ホルモン、特に生理周期の影響をとにかく強く受けています。生理周期には排卵と月経のリズムがありますが、双方で分泌量が増加する女性ホルモンの種類が異なります。具体的には、「卵胞期」つまり月経から排卵までの期間は「エストロゲン(卵胞ホルモン)」が多く分泌され、逆に「黄体期」つまり排卵から月経までの期間は「プロゲステロン(黄体ホルモン)」が多くなるのです。卵胞期のときは女性らしさをつくる「エストロゲン」が優位に立つので、美肌化や自律神経の調整などが活性化されます。問題は黄体期のときなのです。

黄体期は妊娠をサポートして子供を育てるための「プロゲステロン」が増えて、逆にエストロゲンは下がるというホルモンバランスの急激な変化が訪れます。黄体期には妊娠中の身体の状態を安定させるために、体内に水分を保持したり基礎体温を上げたりする作用があることが特徴です。しかし、こういった作用が月経前症候群の原因となります。たとえば身体のむくみは、身体の水分を保持しようとする黄体期特有の症状ですし、ホルモンの働きで「セロトニン」という精神の安定化をサポートする物質が減ると、ネガティブ思考や抑鬱感の原因になるのです。

しかし、パートナーとのセックスを行うことにより、このPMSの症状を緩和できる可能性のあることが示唆されています。ある研究では、性的に活発な女性と禁欲的な女性との間で、PMS由来の炎症にどのような違いが出るかについて調査しました。具体的には、卵胞期と黄体期それぞれの血液と唾液のサンプルを分析したのです。その結果、性的に活発な女性は禁欲的な女性よりも、測定されたすべての免疫レベルが高いことが分かりました。さらに、性行為の頻度が高いほど炎症を誘発する作用が減り、抗炎症性のサイトカイン反応が高まることも明らかになったのです。このことから、セックスにはPMSの症状を緩和する効果があると考えられます。

8.脳の老化防止

セックスは身体だけではなく、脳の老化も緩和してくれるかもしれません。加齢とともに身体や脳が衰えていくことを防ぐことはできませんが、できることなら老化をできるだけ緩やかにしたいですよね。脳の機能、とりわけ「認知機能」は私たちが健康的な生活を送るためには、欠かすことのできない機能ですが、加齢とともに認知障害になるリスクは高まっていきます。認知障害は理解力や記憶力に問題が出る疾患だというイメージがあるかもしれませんが、実は睡眠障害や抑鬱感など精神的な問題も生じさせてしまうのです。しかも、こういった認知障害は不可逆的なものだと考えられているので、脳の機能を回復させることはできません。

脳の老化を予防するためには様々な方法があると言われていますが、実はセックスも有効な手段のひとつのようです。セックスの頻度を高めることによって、認知機能を高められる可能性があるということが、研究によって示唆されています。この研究では、50歳から83歳までの男女73名を対象に、認知機能を調べるためのテストを実施しました。さらに、どれくらいの頻度で性行為を行っているかについて、「しない」「月に1回」「週に1回」のいずれかを選んでもらうという調査も行ったのです。調査に参加した男性の35%、女性の65%が毎月性行為をしていると答えました。

テスト(ACE-III)の内容は具体的には、条件に合致する単語などをそれだけ読み書きできるかという「言語流暢性」と、距離感や奥行きなどを調査する「空間認知力」を調べるものでした。認知テストの結果は非常に興味深いものです。性生活を積極的に送っている人は、いずれのテストでも高い得点を記録しましたが、性生活を送っていない人は明らかに点数が低いことが明らかになりました。ただし、性行為の頻度が高いほど認知機能が高いというわけではなく、あくまで定期的な性生活を「維持」することが、認知機能の維持にも繋がっているようです。

つまり、定期的な性生活を送ることによって、脳の老化を防止できるかもしれないということです。なぜこのようなことが起きるのかについては、まだはっきりとした結論は出ていません。しかし、研究者らはこのように分析しています。セックスのような性的活動によって、脳内の情報を伝達するための「ドーパミン」や、神経伝達に重要な「オキシトシン」などの分泌量が増えることが、脳の機能が向上する原因なのかもしれません。いずれにせよ、健康的な性生活を送ることは、心身ともに健康な人生を送ることに繋がるということなのでしょう。

9.良質な睡眠につながる

セックスは良質な睡眠につながる可能性があります。臨床的な試験においてまだ確定的な論拠は出ていないようですが、セックスにおいて脳内で脳出されるいくつかの物質が、睡眠の質を高める作用があることを示すことは可能です。特に、前述した幸福感をもたらしてくれる「オキシトシン」は、睡眠の質と強い結びつきがあります。そもそも、オキシトシンは女性の生殖をサポートするためのホルモンですが、同時に愛情のこもった行為や異性との接触によっても分泌量が増えるものです。性行為によってオキシトシンが対象に分泌され、私たちをストレスから解放してリラックスした気分にしてくれます。

オキシトシンと共に放出される「ドーパミン」「プロラクチン」「プロゲステロン」などのホルモンも、セックス後の安堵感や解放感、落ち着いた気分に寄与しています。しかも、性的興奮や快感で身体の活性が極限まで高まった後に訪れるものなので、その落差によってリラックス効果はさらに高まるようです。実際にいくつかの研究では、就寝前のセックスによって睡眠の質が有意に高まったり、不眠症が改善したりしたという報告がされています。このことからも、セックスが良質な睡眠につながる可能性は高く、信頼できる仮説だと言えるでしょう。

あるオンラインでの匿名調査では、778名の男女を体操として、性的活動(セックスもしくはマスターベーション)と睡眠の質(本人の認識)との関連性を検討しました。その結果、パートナーとのセックスでは睡眠の結果に対する自己認識が高くなり、マスターベーションでは睡眠の質への自己評価が高くなったのです。やや分かりにくい結果ではありますが、少なくともセックスをすることによって、本人は「よく眠れた」と認識できるということなのでしょう。

その他にも、睡眠とセックスに関する興味深い報告があります。この研究では、171名の精神疾患を抱えていない女性を対象として、性的欲求や性機能と睡眠時間との関係を調査しました。その結果、睡眠時間が長くなると性的欲求が強まり、1時間の睡眠延長でセックスをする割合が14%も高くなることが分かったのです。しかも、平均的な睡眠時間が長い女性は、睡眠時間が短い女性と比べて性器の感度が高いことも明らかになりました。これらの結果から、セックスや性機能と睡眠時間には深い関連性があり、セックスをすると睡眠の質がよくなり、そうなることで性機能も高まるという好循環が訪れる可能性があると言えるでしょう。

10.メンタル面の安定

これまでご紹介してきたメリットでも触れたことですが、セックスは私たちに心身ともにたくさんの良い影響を与えてくれます。そのひとつがメンタルの安定化です。愛するパートナーとの深い愛の行為が精神的に良い影響を与えてくれることは、経験としても感じたことがある女性は多いのではないでしょうか。スポーツやエクササイズと同じように、セックスもまたストレスや不安、イライラなどを軽減して、幸福感を高めてくれるのです。性的活動はメンタルヘルスの改善や自信の向上、社会生活の円滑化などの作用があると考えられています。

前述したように、セックスで快感やオーガズムを得ることで、たくさんのホルモンや神経伝達物質などが放出されます。オキシトシンのような安心感や幸福感を与えてくれるホルモンを筆頭とした、ドーパミンやプロラクチン、プロゲステロンなどの物質です。これによりメンタルヘルスが安定すると共に、パートナーとの関係も親密なものになります。パートナーがおらず孤独を感じている人と比べると、精神的に良い影響があるのは言うまでもありません。しかも、先ほどご紹介したように、性的に活発な人は認知機能など脳の働きも高く、身体的な老化も緩やかになりやすいことも分かっています。

一方で、私たちのおよそ20%は生涯にわたって一度は、精神的な疾患に苦しむことがあります。そうした精神的な苦しみは、性的な機能に大きな影響を与えることが少なくありません。私たちは得てしてセックスは身体でするものだと思いがちですが、性生活で起きることのほとんどは脳で起きています。精神の働きもほとんどは脳によるものです。つまり、セックスと精神にはとても深い結びつきがあり、切り離すことはできないということ。そのため、セックスが精神を安定させるという一方的な見方だけではなく、精神の健康が良いセックスをもたらしてくれるのだと認識することも重要です。セックスと向き合うと同時に、メンタル面でのケアも丁寧に行うようにしましょう。

セックスはいつするのが良い?時間帯別セックスの効果

セックスで女性が得られる素晴らしいメリットについて、学術論文なども交えて詳しくご紹介してきました。ところで、セックスはいつするのが良いのでしょうか。多くの女性にとってセックスは夜の方がいいと感じているかもしれません。しかし、実は男性は朝にセックスをするのが好きな人も多いのです。おそらく、これには基礎体温やホルモンの働きが関係しています。先ほども少し触れたように、女性が性的興奮を感じるのに重要なのは副交感神経の活性化です。私たちの体温は朝のうちは低く、夜に向かって徐々に高まっていき、さらに夜になると副交感神経が優位になります。このことが、女性が夕方以降にセックスしたくなる理由です。一方で、男性は朝にテストステロンの分泌量が最も多くなるので、朝こそセックスしたいという人が多いのでしょう。

こういったセックスと時間帯との関係を調査した研究はいくつかあります。大きな影響を与えるのが「クロノタイプ」です。クロノタイプは分かりやすく言うと「生活パターン」のこと。大きく分けて「朝型」と「夜型」の2つのものがあります。朝型は、朝は早めに起床して活動を始めて、夜は比較的早めに眠りにつくタイプです。夜型はそれとは全く対照的で、朝や昼はあまり元気が出ずに、夜になると活発になって深夜遅くまで起きている人を指します。一般的にクロノタイプは生まれつき決まっていることが多く、50%くらいは遺伝子に左右されているようです。

ある研究では、こういったクロノタイプと性的欲望が高まる時間帯との県警について、18歳から57歳の男女565名を対象に調査を行いました。女性ではクロノタイプに関係なく、セックスの必要性を感じる時間帯は「18:00~24:00」に集中していましたが、2番目に多いのは「6:00~9:00」の時間帯だったようです。一方で男性はクロノタイプによって大きな差があり、朝型では「6:00~12:00」と「18:00~24:00」、夜型では「9:00~12:00」と「18:00~3:00」となったのです。これらの結果から、女性は朝型と男性とセックスの時間帯の相性が比較的良く、夜型の男性とは合わない可能性が高いということが分かります。

同様の研究は他にも行われており、こちらではセックスの満足度についても調査しています。その結果、実際にセックスを行う時間帯については、女性の好みに左右されることが多いようです。しかし、セックスの満足度に関しては、双方のクロノタイプやセックスの好みの時間の不一致が少なく、なおかつ性行為の頻度が高い方が、セックスの満足度が高いことも明らかになりました。いずれにせよ、「18:00~24:00」はクロノタイプや性差に関係なく、多くの人がセックスしたくなる時間帯ということです。つまり、基本的には夜が一番セックスに向いている時間帯だと言えるでしょう。

健康に良いセックスは「本当に気持ち良い」と思えるかがカギ

セックスで得られる数々のメリットや、理想的なセックスの時間帯について考察してきました。しかし、必ずしもこれらのメリットを得られるわけではない、という点には注意が必要です。いくつかの項目でも触れたように、セックスで得られる身体的および精神的なメリットは、カップルの関係やセックスへの満足度に左右されます。つまり、健康にいいセックスとは「本当に気持ちいい」と感じられるかどうかが、極めて重要だということです。

セックスで快感を得るための要素には、大きく分けて2つのものがあります。それは「性器の感度」と「カップルの関係」です。性器の感度は、クリトリスやGスポット、Cスポット(ポルチオ)などの性感帯が大きく影響します。クリトリスとヴァギナのどちらを集中的に刺激して、オーガズムに達するかによっても、快感の種類が大きく異なることも重要です。こういった性器の感度は、マスターベーションでの開発によって高めることができます。

カップルの関係も、セックスの快感に極めて重要です。なぜなら、愛情が深いほどセックスの興奮が高まり、ドーパミンやオキシトシンなどの物質の分泌量も高まるからです。セックスがマンネリ化しておらず、常に刺激のあるプレイをできることが大切になります。そのためには「セックストイ」の使用も欠かせません。今回ご紹介したセックスのメリットを最大限に享受するためには、こういったオーガズムの種類や効果的な感じ方、テクニックなどについても、理解を深めておく必要がありそうです。

まとめ

今回は、セックスによる10のメリットについて、科学的なデータも交えて解説しました。セックスで享受できるメリットは実にさまざまです。「免疫力の向上」「ストレスの解消」「カロリー消費」「自律神経の調整」「尿失禁の改善」「若返り効果」「月経前症候群の改善」「脳の老化予防」「良質な睡眠」「メンタルの安定化」など、女性にとってはまさに嬉しいことばかり。こういったメリットは、セックスによって分泌されるホルモンや神経伝達物質などが、強く影響していることが分かりました。

ただ、実際にセックスでこういったメリットを享受するためには、カップルの関係が良好で愛情も絆も深く、なおかつ本当に気持ちよくなれることが重要です。そのためには、日常生活でのコミュニケーションやスキンシップ、セックスがマンネリ化しないための対策なども欠かせません。セックストイを活用したセックスプレイの多様化や、マスターベーションでの性感帯開発などは、性生活を豊かにするための極めて有効な手段になります。セックスを楽しんで、パートナーと共に豊かな人生を送りましょう。